弁護士 阿部有生也

【解決事例/男女問題】既婚者とは知らなかったのに、不貞慰謝料を支払う合意書にサインさせられた事例

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【解決事例/男女問題】既婚者とは知らなかったのに、不貞慰謝料を支払う合意書にサインさせられた事例

【解決事例/男女問題】既婚者とは知らなかったのに、不貞慰謝料を支払う合意書にサインさせられた事例

2024/08/28

こんにちは。

伊倉総合法律事務所の弁護士の阿部有生也です。

 

男女問題の解決事例を1つご紹介させていただきます。

 

◆相談前のご状況

ご依頼者様は、ある男性と結婚を前提に交際されていました。しかし、その男性は実は既婚者で、その奥様が依頼した探偵に突然声をかけられ、奥様、探偵と話をすることになりました。その際、ご依頼様は、既婚者とは知らなかったと説明しましたが、長時間にわたって奥様や探偵に詰められ、最終的に慰謝料を支払うという内容の合意書にサインをさせられてしまいました。

 

◆解決までの流れ

合意書は無効であるとして、合意書に基づく支払いを拒否したところ、訴訟提起をされました。

その裁判内で、探偵の非弁行為等を主張・立証し、公序良俗違反で合意書は無効であると主張しました。

また、ご依頼者様には、男性が既婚者ではないと認識しており、その認識についても過失はないと主張しました。

結果、最終的に、原告の請求を棄却する(完全勝訴)という形で解決することができました。

 

◆実際の判決の内容

判決の一部をご紹介します。

裁判所は、公序良俗違反について、以下のとおり判示しました。

「(1)公序良俗違反について
 ア B(※探偵)は,本件和解契約への関与について弁護士法違反の罪で有罪判決を受けているところ,前記認定事実によれば,Bは,原告からの依頼を受けて,事前に和解に用いるための書面の書式を原告に提供した上で,単独で被告に接触した上で交渉の場を設定し,約8時間にわたって交渉の場に立ち会い,さらに,本件和解契約締結後にも自ら被告にメッセージを送信して本件和解契約の内容の履行を要求するなどしているのであり,このような具体的な関与状況に加え,原告から数十万円もの報酬を受け取っていること,本件和解契約への関与以外にも複数の不貞に係る和解交渉についても同様に関与していることからすると,Bは,職業的に,不貞関係に係る和解交渉について有償で依頼を受けて,本人と一緒に又は本人に代理して具体的交渉を行っていた者であり,本件和解契約についても,単なる立会人としてではなく,具体的な交渉を含めて関与していたものと認めるのが相当である。
 イ これに対し,原告は,Bについて,具体的な交渉には参加しておらず,交渉の場に立ち会ったにすぎないと主張し,本人尋問においても,交渉のサポートをしてもらうために,インターネット上で検索して依頼した不倫コンサルタントであるなどと上記主張に沿う供述している。
 しかしながら,単なる立会人に対して数十万円の報酬を支払うというのは不自然である上,上記のBの積極的な関与状況にも整合しないし,本件においては,本件和解契約の有効性について,当初からBがいかなる人物であるのかが重要な争点となっていたにもかかわらず,原告は,自らBの共犯として略式請求を受けるなど,本件和解契約に関してBとは密接な関係にありながら,Bの身元や関与状況等について具体的に明らかにすることをしなかったのであり,このような経緯も併せ考慮すると,Bに関する原告の供述は信用することができない。
 ウ この点,原告は,仮にBの本件和解契約の関与が弁護士法違反に該当するとしてもそのことから直ちに本件和解契約が無効にはならないと主張する。
 そこで,Bが関与した本件和解契約の具体的な交渉状況について検討すると,Bは全く面識のない被告の勤務先を訪問し,路上で突然声をかけるなどして交渉の場に同行させ,さらには,約8時間にわたって原告と一緒に被告と交渉を行っているのであり,このような行動は,交渉の場となった飲食店がある程度開放的な場所であったこと(甲6)を前提としても,一般人である被告としては十分恐怖感を覚えるようなものであったといえる。
 そして,和解合意書(甲4)は原告及びBが準備したものであり,これに基づき合意された慰謝料は500万円と一般的な不貞慰謝料に比して相当高額であるし,被告の父親の氏名や連絡先も記載させるなどしていることからすると,本件和解契約の内容は,基本的には原告の要求に被告が応じたものである認められる。
 また,本件和解契約締結後にも,原告及びBは,「彼との諍いについて,〇〇署へも週明けには事の説明をする事になるかと思います。その際,経緯として,貴女の事まで彼は話すつもりのようです。」,「話がどんどん広がる事があなたの望みだったのですか?〇〇のホテルの音声を出されるのは,女として耐えられないと思います。」とのメッセージを送信しており,これらは,被告に対して,A(※交際相手の男性)との関係やこれに関して被告が望まない事実が公になる旨をあえて伝え,合意内容の履行を促すことを目的としたものといえる。
 以上の事情を踏まえると,本件和解契約締結に至る交渉においては,原告及びBは,和解に応じない場合の不利益としても上記のような内容を話して和解に応じるよう被告を強く説得し,本件和解契約締結に至らせたものと認めるのが相当である。
 エ 以上によれば,本件和解契約は,単にBが弁護士法に違反して関与したにとどまらず,Bにおいて具体的な交渉を含めて積極的に関与したものである上,その交渉態様は事後的な対応も含めて相当性を欠くものといわざるを得ないから,このような経緯で締結された本件和解契約は,公序良俗に反するものとして無効というべきである。」


また、裁判所は、ご依頼者様が男性が既婚者ではないと認識していたことについて、以下のとおり判示しました。

「(1) 被告の故意又は過失の有無
 ア 故意について
 前記認定事実によれば,被告とAは,同居を前提に新居を探し,Aにおいて具体的な申込書まで独身であることを前提に作成しており,被告の両親にも交際相手として挨拶し,被告との間の性交渉でも避妊をせずに被告が妊娠することについても肯定的な姿勢を示し,交際期間中には宿泊を伴う海外旅行等にも複数回にわたって行っているのであり,このような交際状況は,Aが既婚者ではなく,被告との結婚を積極的に検討していることを前提としたものであることは明らかであるから,バツイチであるとのAの説明を信じていた旨の被告の供述は信用することができる。
 したがって,被告には,Aが既婚者であったことについての故意は認められない。
 イ 過失について
 (ア)そこで次に,被告が,Aが既婚者でないと信じたことについての過失の有無を検討すると,前記のような具体的な交際状況を前提とすると,被告において,Aが既婚者ではないかと疑うような端緒は認められず,Aの説明に疑念を覚えることは極めて困難な状況であったと認められる。
 この点,原告が過失の根拠として主張する,Aの自宅を訪問できなかったことやクリーニングの領収書に係る経緯については,確かにやや不自然な点はあるものの,これらの点についての被告の説明内容について不合理な点は見当たらず,前記アの交際状況を前提とすると,上記のようなエピソードのみをもって被告の過失を基礎づけることはできないし,仮に被告に何らかの疑念が生じ得たとしても,これを解消するために可能であった具体的な調査方法等も直ちには認め難い。
 かえって,被告は,本件和解契約締結直後に,知人に対してAが既婚者であることを知って困惑していることを報告しており,また,Aは被告に対して本件に関して自らに全面的に非があるとして謝罪を行っているのであり,これらの事情は,Aが既婚者であることを被告に隠しており,被告においてもこれを疑うことが困難であったことを裏付けている。
 (イ)これに対し,原告は,被告において過失を認めていたからこそ本件和解契約を締結したのであり,交渉の際には自らの過失を認めるような発言をしていた旨主張する。
 しかしながら,既に述べたとおり,被告が本件和解契約を締結したのは,Bの弁護士法に違反する態様での交渉への積極的な関与を前提に,和解に応じない場合の不利益等を述べられた結果と認められるから,和解に応じたことをもって被告が過失を認めていたとはいえないし,交渉の場において被告が自らの過失を認めるような発言をしたことを認めるに足りる的確な証拠はない。
 (ウ)したがって,被告には,Aが既婚者でないと信じたことについての過失は認められない。」

 

◆コメント

合意書が作成されてしまっている場合、一般的にはそれを争うのは難しいことも多いですが、この事案では、先方の対応が度を越えており、結果、関与した探偵について弁護士法違反として刑事処分もされたことから、その点を主張・立証し、ご依頼者様の全面勝訴という形で解決することができました。

 

このように、不貞事案においては、当事者同士において話し合いをし、示談書・合意書を締結するというケースは少なくありません。

本件に限らず、既婚者とは知らなかったというケースでも相手に詰められて合意書にサインしてまったというご相談や、高額な金額で合意書にサインさせられてしまったというご相談は少なくありません。

実際に合意書などを作成してしまうと、一般的には、その後に争うことは難しいため、その場ではサインはせず、弁護士など専門家に相談するのが望ましいです。

 

他方、不貞をされた側の立場からすれば、相手の言い分をそのまま信用することはできないでしょうし、先延ばしするのは不誠実であるとして、その場でサインしてもらいたいという気持ちは十分理解できます。

また、調査を依頼した探偵などから、自身らで話をした方が良い、その場でサインをさせた方が良い、とアドバイスを受けることもあると思います。

しかし、その対応が度を越えてしまうと、本件のようにその合意書の効力が無効となったり、場合によっては、刑事処分に問われる可能性がありますので、ご注意いただければと思います。

 

不貞の慰謝料請求を検討している方も、不貞の慰謝料請求を受けてしまったという方も、どのように対応して良いかお悩みの方は、お気軽にご相談いただければ幸いです。

 

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弁護士 阿部有生也(伊倉総合法律事務所)
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